はじめての法人経理・口座

はじめての法人決算:個人事業の確定申告との違いと準備

Tags: 法人決算, 確定申告, 個人事業, 経理, 税金

はじめに

法人を設立された起業家の皆様、おめでとうございます。事業が軌道に乗り、いよいよ最初の法人決算が近づいてきたという方もいらっしゃるかもしれません。個人事業主として確定申告の経験があっても、法人決算となると手続きや考え方が異なり、不安を感じることも少なくないかと存じます。

この記事では、初めて法人決算に臨む方を対象に、個人事業の確定申告との主な違いや、決算に向けて知っておくべき基本的な知識、そして日々の経理で意識しておきたい準備のポイントを分かりやすく解説いたします。

法人決算とは? 個人事業の確定申告との基本的な違い

個人事業主が行う確定申告は、主にその年の所得を計算し、所得税や住民税、個人事業税などの税額を確定・申告・納付する手続きです。これに対し、法人の決算は、事業年度(通常1年間)の経営成績と財政状態を明らかにし、それに基づいて法人税、法人住民税、法人事業税などの税額を計算・申告・納付する手続きです。

主な違いは以下の点が挙げられます。

これらの違いから、法人決算は個人事業の確定申告よりも複雑であり、専門的な知識がより求められる傾向があります。

初めての法人決算で押さえるべき基本

初めての法人決算を進めるにあたって、以下の点を押さえておきましょう。

事業年度の確認

ご自身の会社の事業年度(決算期)がいつからいつまでなのかを確認します。定款で定めた事業年度の最終日が決算日となります。例えば、4月1日から3月31日までの事業年度であれば、3月31日を決算日とし、そこから原則2ヶ月以内(この場合は5月31日)が申告・納税期限となります。

経理処理の締め

事業年度末までの全ての取引(売上、仕入、経費の支払いなど)を会計帳簿に漏れなく記録し、集計します。これが「帳簿の締め」です。日々の経理処理が正確に行われているかが、この段階で非常に重要になります。

決算整理仕訳の実施

事業年度末の正確な財政状態と経営成績を把握するために行う特別な仕訳を「決算整理仕訳」と呼びます。個人事業の確定申告では簡易的な処理で済ませていた項目も、法人会計では適切に処理する必要があります。代表的な例として、以下のようなものがあります。

これらの決算整理仕訳を行うことで、会計帳簿上の数値が最終的な決算書の作成に必要な形に整えられます。

決算書の作成

決算整理仕訳が完了した帳簿データをもとに、決算書を作成します。主要な決算書は以下の通りです。

これらの書類を作成することで、会社の経営状況や財政状態が数字で明確になります。

法人税等申告書の作成と申告・納税

作成した決算書をもとに、法人税、法人住民税、法人事業税などの税額を計算し、それぞれの申告書を作成します。税額計算にあたっては、会計上の利益から税法上のルールに基づいた調整(加算・減算)を行う必要があり、これが税務申告の難しさの一つです。

申告書が完成したら、税務署、都道府県、市区町村に提出し、計算された税金を納付します。申告期限と納税期限は原則として同じ日です。

決算に向けての日々の準備と注意点

初めての法人決算を円滑に進めるためには、決算期になってから慌てるのではなく、日々の経理処理から意識しておくことが大切です。

まとめ

法人化後初めて迎える決算は、個人事業の確定申告とは異なる点が多く、戸惑うこともあるかと存じます。しかし、法人決算は会社の状態を把握し、今後の経営に活かすためにも非常に重要なプロセスです。

日々の経理処理を正確に行い、証憑類をきちんと整理するなど、決算に向けての準備を計画的に進めることが成功の鍵となります。会計ソフトの活用や、必要に応じて税理士のような専門家のサポートを得ることも、初めての決算を乗り越える上で有効な手段です。

この記事が、皆様の初めての法人決算に向けた不安を少しでも和らげ、スムーズな手続きの一助となれば幸いです。